Midori Okuyama
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学科主任・教授奥山 緑
専門領域
舞台芸術企画制作、アーツマネジメント
主な担当授業
演劇概論I、企画制作演習、劇場論II、戯曲購読演習など
教育内容と方針
社会に出て舞台芸術の専門家になるために必要な知識を身につけ、スキルを獲得し、難しい局面を乗り越えるための「ものの考え方の土台を作る」、そういう4年間を送ってほしいと考えています。
自分の専門分野で申し上げれば、企画制作は、社会と舞台芸術を繋ぐ役割を担いますので、コミュニケーションの力を養うために、聞いたり、書いたり、話したり…の機会を多く用意した授業を行います。自発的な学びが一番身につきますので、あなたの興味を突きつめていってください。
演劇や舞踊の現場は、多様なアーチストやスタッフの創造性を集中度高く統合し、形にしていくわけですが、その創造物を世の中の人の前にだす窓口となるのが企画制作者でもありますので、企画制作を勉強する際には、芸術の創造現場側、そして世の中の人の気持ちの側の両方に深い興味をもつようにしましょう。
4年間どのような勉強をしたら、舞台芸術の基礎的な教養を身につけ、演劇の専門家への入口にたどり着けるのでしょうか?日芸演劇学科は教員間でどんなカリキュラムが学生にとって最適なのかをよく話し合っておりますので、最新の舞台芸術界の息吹を感じられるようなカリキュラムを提供しているものと自信をもっています。現在はこれまでにも増して「戯曲を読む」ことに重きをおいた授業が組まれています。
演劇の企画制作者として35年以上現場で仕事をしてまいりました私がいま思うのは、演劇は見るのも楽しいですが、作るのはもっと楽しいということです。そして、人の創造性を信じて、見たことない舞台を作る、舞台芸術と社会を繋ぐ新しい企画を立ち上げるといった演劇の企画制作の勉強をすることは、ほかの創造産業で働く時にも大いに役立つでしょう(会計やマーケティングの基礎の授業なども3年生になるとあります)。そのために戯曲を読み、こんな世界があったのか!と知らない世界に出会える「演劇」の勉強を深くしてまいりましょう。
Naoya Kobayashi
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教授小林 直弥
専門領域
舞踊学、演劇史、芸能史、民俗芸能研究
主な担当授業
演劇史I、民俗芸能文化論、日本舞踊演習、ゼミナールなど
教育内容と方針
私の研究領域は、舞踊学、日本の演劇史、芸能史、そして民俗学・民俗芸能です。「舞踊学」という講座では、日本と世界の舞踊文化やその表現の比較を中心に文化人類学的な観点も含め「なぜ人間は舞い、そして踊るのか?」をテーマに授業を展開しています。また、演劇学科の必修科目では、古代から近代までを通し、「先人たちが何を創り、そして何を私たちへ伝えてきたのか?」を主題に、日本の芸能・演劇の歴史を振り返りながら、今、そしてこれから日藝で何を創造し、そして何を持って社会へ飛び出していくのかを考えることを重視した授業展開をしています。さらに、芸術学部全ての学生が受講できる芸術教養課程では、「民俗芸能文化論」や「日本の芸能史」を担当し、これからの芸術創造に必要とされる領域を超えた創造的思考として、試験のための暗記学習ではなく、授業を通し領域を超えた新たな知識から刺激を得て、卒業後に様々な分野で活躍できる創造思考を養うための授業も行っています。
そもそも芸術を学ぶこととは、教養を身につけることです。芸術は何も特別な存在ではなく、私たちの生活の中にどこにでも溢れています。何も奇抜なことや個性だけが重視されるものではありません。多様化する世界情勢の中で、日藝、そして演劇学科では、歴史や理論、そしてそれらの知識を実践に活かしながら、まず自分を知り、そして人と人とのコミュケーション能力を高めながら、社会、そして世界で活躍するための芸術教養を学修し、そして日藝ライフで養ったバイタリティを蓄え、四年後、または大学院を経て、江古田から社会へ、そして世界へ飛び出して行って欲しい、そんな思いで講義に臨んでいるのです。
「芸術とは、学ぶのではなく、常に刺激を受け、新たな創造をすること。」
どんな芸術にも自分に限界や領域をつくらない。挑戦力と創造力を養い、思う存分楽しみ、そして、ここ日藝から羽ばたいて欲しい。それが私の教育方針です。
Sigeki Nakano
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教授中野 成樹
専門領域
舞台演出
主な担当授業
演出演習、演出論、上演実習、総合実習、ゼミナールなど
教育内容と方針
演出にかかる授業をいくつか担当しています。そもそも、演出ってなんでしょう? 色々な考えがあると思います。その一つの答えに、「演出とは平面を立体にする仕事である」といったものがあるように感じます。2次元(戯曲)を、3次元(舞台作品)にすることですね。正方形のただの紙キレを、繊細な鶴に折り上げる。あるいは、紙に書いてある調理レシピを、実際に食べられる美味しい料理にする。そんなイメージでしょうか。さらに、実際の上演にあたっては、3次元を4次元、5次元へと導くことも演出者の大きな役割かもしれません。4次元? 5次元? そう、演劇ってただの3Dじゃないのです。でも、だったらいっそ、17次元くらいまで行けやしませんかね。え、17次元って何? 正直、いっている私もよくわかりません。でも、どこかにあるような気がしませんか、17次元演劇。2.5次元演劇も面白いけれど(2.5って実に深い言い当て方ですよね!)、きっと17次元探しの旅も楽しいはずです。一緒に冒険しましょう。それはそうと、1次元演劇があるとすれば、それはどんな演劇だと思いますか? では、またどこかで。
FAN LU
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教授范 旅
専門領域
舞踊学、モダンダンス創作法、東洋の身体表現
主な担当授業
舞踊特殊実習Ⅰ、総合実習、舞踊特殊研究B(院)など
教育内容と方針
国立北京舞踊学院卒業後、1988年に来日、1995日本大学大学院芸術学研究科修士課程を修了。東洋と西洋舞踊の特徴を活かしつつ、モダン・ダンスのエッセンスを取り入れながら、新しい身体表現方と多角的な舞踊創作を模索しています。
舞踊コース洋舞専攻では、西洋舞踊理論とダンス技術を学ぶだけでなく、さまざまな身体表現を研究して作品を創り、自分だけの表現方法を身につけることができます。1年次からモダン・ダンスやバレエなどのテクニックと創作方法を修得し、2年次からはみずからの振付作品制作に取り組みながら、舞台での実践を行っていきます。また日本舞踊や東洋舞踊、演技や舞台技術はもちろん、さらに他学科の映像、音楽についてなど、幅広い科目を履修しつつ、専攻分野を超えて舞台発表を行っており、これらは総合的な芸術人材育成の実践教育を行う「日芸特色」のひとつとなっています。卒業生の中には振付、ダンサー、指導者など舞台芸術関係の分野に活躍する人もいます。
Masahiko Matsunaga
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教授松永 雅彦
専門領域
西洋舞踊
主な担当授業
西洋舞踊実習Ⅰ、西洋舞踊実習Ⅲ、総合実習など
教育内容と方針
⻄洋舞踊の実習などを中⼼に授業を担当しております。特に舞踊創作法などの⽅法論を専⾨としており、学⽣たちと創作の⽇々を過ごしています。ダンスとは⽇常の中に溶け込んでいる様々な動きや感情から⽣まれてくる⾝体表現であり、そのためには厳しいトレーニングを積み重ねることにより⾝体の⾃由性を体得し、また様々なものに触れることにより、感性や考え⽅、捉え⽅の視野が広がっていくのではないのかと思います。 ダンサーの呼吸や間、⾝体的特性などはそれぞれであるように、創作作品も⼈によって作品テーマの選び⽅やコンセプト、⾳楽の使い⽅、空間の捉え⽅など、その⼈のオリジナリティであり、顔がしっかり⾒えてきます。私⾃⾝、学⽣達との普段の授業や、実際に作品を創って上演する総合実習という 実践的授業の中で、多くのテーマと出会い、それをどのように創作していくのか、毎回⼤変興味をもって⾒ています。あらゆる芸術に於いて、創作するということは、これが正しいという正解がなく、また数字などで表すことは⼤変困難であると実感しています。だからこそ新しいものが⽣まれてくるのではないかと感じています。⽇芸はとてもユニークで感性豊かな⼈たちが出会い、同じ時間を共有しながらお互いを磨き上げ、新たな可能性を発⾒し、未来へ⽻ばたいていく場であることを実感しています。是⾮、皆さんも未来に向かって⼀緒に進んで⾏きませんか。
Ryu Matsuyama
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准教授松山 立
専門領域
演技論、俳優トレーニング
主な担当授業
演劇史Ⅱ、演技実習Ⅰ、特殊演習Ⅰ、戯曲購読演習、総合実習など
教育内容と方針
こんにちは。「演劇史Ⅱ」で西洋演劇の歴史を講義したり、「演技実習Ⅰ」で演技の実習授業を担当したりしています。また、研究者としては俳優トレーニングについて調べています。演劇の理論と実践をどう統合するか?そのことがいつも気になっています。
演技の授業では、詩や独白、そして対話のテキストを通じて演技を考えていきます。ただ、いつも気をつけているのは、外から手を出して学生の演技を「よくしよう」としないこと。目指すところは、学生が自分自身の力に気づき、試行錯誤の中から演技のメカニズムを解き明かせるようになることです。
演劇創造の場では、プランを立てる人(計画・デザインをする人)とオペレーションをする人(実際に作る人)が別々のことも珍しくありません。演出家が立てたプランを実行に移すのはキャストとスタッフですし、舞台美術デザイナーのプランを具現化するのが美術製作チームの仕事です。音響や照明もそう。
しかし、演技者だけはプランナーとオペレーターが絶対に同一人物です。俳優に必要なのは、自分自身の頭を使って作品を読み解き、自分自身の身体を使ってそれを実行に移す力。授業を通じて、君が「考える行動者」になれるよう導くのが私の仕事です。
演技というのは不思議なもので、その人がはじめからもっている魅力が、演技によって見えなくなってしまうことがあります。はじめからもっているのに、別のものをほしがると、もっているものまで無くなってしまう…演技には、どうやらこういう落とし穴がありそうです。君には、もう手にしているものを欲しがるのではなく、それを誰か他の人へ手渡せる演技者になってほしい。
「愛の深さもそう、あげればあげるほど湧いてくる。どちらもきりがない。」
(『ロミオとジュリエット』より)
Eiho Yamaguchi
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准教授山口 英峰
専門領域
劇場管理運営、プロダクションマネジメント
主な担当授業
演劇基礎演習、舞台監督演習、舞台技術研究Iなど
教育内容と方針
文化拠点としての劇場がいかにして社会性を持つか、それは劇場で活動する人々の文化、社会に対する意識が重要となります。ここでいう意識とは、「今自分が行っている行為がどのような目的も持った文化活動の一部であるのか」と考える事であり、劇場の中から外を意識するという表現に言い換えられます。
劇場の中から外を意識する事を怠れば、劇場は「上演設備を持った建造物」となり、社会と密接な関わりを持つ事は困難となります。これはとても寂しいことです。
劇場の中から外に向かったエネルギー(発信する作品や情報ということではなく、劇場自体が持ち得るエネルギー)は、いくつかの変化、反応を経て劇場へ戻り、新たな創造活動の糧になります。この行為、現象の先にこそ、人が集う「場」としての劇場が存在するはずです。
劇場が、人々が集う「場」として存在するということは、劇場が強い社会性を持ち、劇場とそこを訪れる人々が社会の中で強い結び付きを持つという素晴らしい風景です。
今の日本では稀なその風景を、20年後に日本各所で恒久的に見られるものにするために、それを支える演劇人、劇場人に必要なものは何であるべきかをともに考えます。
《教育方針》
戯曲、演技、舞踊、演出、美術、照明、音響、舞台制作、舞台進行、衣裳等を各人が学ぶ際に、目前の表現や技術の実現、知識の集積に集中するだけではなく、それらに付随する芸術性、社会性を強く意識し、各々が情熱を注ぐその手段の先には「劇場文化、舞台芸術の発展」という大きな共通の目的があると捉えて欲しいと強く思います。
Takuya Aoki
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専任講師青木 拓也
専門領域
舞台美術
主な担当授業
舞台美術実習Ⅰ、舞台美術実習Ⅱ、総合実習など
教育内容と方針
ふるえるほどの演劇体験が、わたしをつくりました。演劇を通して自己の内面を自覚したとき、世界は見違えるほど豊かに彩られていきます。その体験は、決して消費されることがなく、人生にひっそりと寄り添い、ときおりわたしに力を与えてくれます。そんな「演劇の力」とはじめて出会えたのは、この大学でした。
「舞台美術」とは、端的にいうと「劇的な空間を新たに創り上げる分野」です。そのデザインプロセスには、自由で豊かな発想と共に、高度な技術や幅広い知見が求められます。企画や戯曲、演出に寄り添うためには、絵画、彫刻、建築など様々な芸術・文化への造詣が必須ですし、それらを基盤としながら、さらに演劇作品に対する独特なアプローチをも体得しなければなりません。ただ発想が鋭いだけでは任せられず、技術があるだけでも力及ばない。だからこそ、舞台美術という分野には、大学で4年という時間をかけて学ぶ意義があります。
わたしも、まだまだ道半ばです。きっと生涯、学ぶことが尽きません。芸術に打ち込み、人生を豊かにしたいなら、こんなに素晴らしい分野は他にないと思います。大いに演劇を学び、ともに世界を見つめる眼差しを鍛え上げましょう!
Kaori Minami
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専任講師南 香織
専門領域
照明
主な担当授業
舞台照明演習、舞台照明実習Ⅲ、総合実習など
教育内容と方針
舞台表現において正解はありません。故に常に「考える」ことを重視し、自分なりの答えを探し他者へ「伝える」ためにはどうすればよいのかを、自らの手で掴むことが重要であると考えます。考え、伝えるツールとしての舞台照明とは何なのかを理論と実践の両面から学び、作品創作に必要な知識と技術を習得します。舞台照明演習や舞台照明実習の中で電気理論・舞台機構・照明設備・機材の使用方法といった技術と、舞台照明の歴史・光が与える印象や演出効果など照明デザインのための知識や理論を学ぶことができます。
舞台照明という分野は、機材や電気に関する技術だけでなく空間をデザインする構成力や、作品に対する想像・理解が複雑に絡み合って構成されるものです。技術とデザインを並行して学ぶことでより表現の幅が拡がるでしょう。
そして様々な人に出会うことになります。より多くの人と関わることそのものが大きな学びとなり、集団創造である舞台芸術を作り上げる重要な要素となります。
私は15年現場で舞台照明家として活動してきましたが、人と関わらなければ成り立たない仕事だと年を追うごとに感じます。「この人と一緒に創作がしたい」と思う人は皆人に感謝ができる人です。そういった人間性も作品に大きく影響するため、4年間の学生生活の中で多くの人と出会い、人間を磨いていくことを期待します。
Haruhi Imai
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助教今井 春日
専門領域
音響
主な担当授業
音響実習Ⅱ、演劇基礎演習など
教育内容と方針
⾳は、空気を伝ってわたしたちに届いています。⽬に⾒えないぶん底知れぬ魔⼒を持って、ときに気づかないほど繊細に、ときに全てを飲み込むほどの圧倒的な⼒で、空間に波を起こし、世界を震わせます。演劇は、その時その場所に居合わせた⼈だけが共有できる空気があ
ります。舞台と客席の境界が消え、互いの緊張感や⾼揚感を感じ取り合うことで⽣まれる瞬間。空気のふるえを肌で感じるような素晴らしい演劇体験に、舞台⾳響はとても密接にかかわっていると思います。
⾳響の仕事は多くの機材などを取り扱う技術者でありながら、舞台という芸術の表現に携わる⼤切な⼀員です。普段から⾝の回りにあふれるあらゆる⾳に興味を持つことや、戯曲や作品を深く知り、読み解き、新しく発想する⼒が⼤切ですし、表現したい⾳を効果的に舞台空間に⽴ち上げるためには、⾳の性質や聴覚の特徴といった理学的知識や、機材を正しく安全に設置し操作する実践的な技術と経験が必要です。このような「表現」と「技術」の両側⾯から、舞台⾳響のおもしろさを学んでほしいと思います。
そして演劇学科で⾳響を学ぶ最⼤の魅⼒は、他専攻の仲間たちと共に学び、作品を創り上げる経験ができることだと思います。舞台は、様々な分野の⼒が合わさって⽣まれる総合芸
術です。それぞれが真摯に⾃分の役割や表現と向き合い、尊重し合いながら、ひとつの⽬的地を⽬指すという⻑い道のりの中で、⾳を単に「⽿」という器官で聞くだけではない、舞台⾳響を志す上でとても⼤切な景⾊が⾒えるはずです。
Yoko Oike
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助教大池 容子
専門領域
劇作・舞台演出
主な担当授業
劇作実習Ⅱ、総合実習など
教育内容と方針
演劇の台本のことを、戯曲(ぎきょく)と呼びます。元々は十二、三世紀頃の中国で「雑戯(演劇・芸能)の歌曲」を指す言葉だったようで「俳優によってうたわれ、演じられる」ものという意味が含まれています。だから「台詞」や「ト書き」がなくても、たとえば絵や図で描かれたものでも、俳優によってうたわれ、演じられるものであれば、どんな形であっても戯曲と呼んでもいいのかもしれません。しかし「戯曲の書き方に正解はありません、さあ、自由にのびのびと書いてみてください」と言われても、これから劇作家を目指すほとんどの人は、困ってしまうのではないでしょうか。
十八代目・中村勘三郎さんの言葉に「型があるから型破り。型が無ければ、単なる形無し」というものがあります。演劇学科では、名作と呼ばれている戯曲がなぜ名作なのか、どのような趣向や手法が使われているのかを声に出して読みながら学び、劇作専攻の人たちはそこから先人たちが生み出した様々な「型」を覚えて、自分なりの文体を見つけていきます。そして劇作の授業では、個人創作だけではなく、グループでの創作を多く取り入れています。劇作は孤独な作業というイメージがあるかもしれませんが、他者とアイディアを共有しながら一つのものをつくりあげていくことで「自分の頭の中の世界を他者に伝える」難しさと楽しさを知ってもらうことを目指しています。